中学生サッカー少年達と同じペースで山を歩いたら、ちょいちょい死にかけました。
そりゃそうです。
さとうだいすけくんは43歳の男の子ですから。
最近、自分の中でこのサイトに記録を残す目的がフワフワしていたので全然更新出来なかった。調べたら去年の7月から何も記録していない。このサイトへのアクセス数を調べるアプリをたまに開いては毎日何処からか来てくれる新規の観覧者を確認して驚いたりしながら、記録は更新せずSNSだけを定期的に更新して来た。それだけでも充分な気もしていたし、そっちの方が良いような気もしていた。このサイトとSNSの違いはなんなのか。そんな根本的なことがフワフワしていた。
でもなぜか今回の登山で、久々に記録を残そうと思った。
なぜかわからないけど、そう思った以上は何も考えず記録していく事にする。
----去年の夏。メッセンジャーでこんな連絡が来た。
「自分が経営しているサッカークラブの選手(中学生)20名ぐらいを山に連れて行くのは難しいかな?」
僕は小学校、中学校と神奈川県の座間市でサッカーをやっていた。そして連絡をくれた彼も違うチームで小学校、中学校と座間市でサッカーをやっていた。サッカーを通じて仲間になった人たちの中には大人になってからも色んな形でサッカーを続けている人が沢山いて、子供達に教えている人達もそれなりに知っているが、僕が知る限りチームまで作ったのは彼だけ。サッカーをやめた途端 拗ねるように遊び呆け、全然違う道を選んだ僕の目には彼が偉大な人に見え、プロサッカー選手より偉大な事をやっているように感じる。自分がサッカーする場所じゃなくて子供達がサッカーをする場所を作っているんだから。
僕は今、丹沢を通して人を繋ごうと考えTANZAWA STOREとゆう店を作り、誰かの後押しをする場所を作り始めた。
そんな色んな意味を思い、この話に協力させて貰うことにした。
場所や所要時間をいくつか提示すると、登る山とルートはすぐに決まった。
丹沢、塔ノ岳へ大倉尾根を登るルート。
このルートは、富士山と似たような標高差があるので楽には登れないけど、中学生のサッカー少年なら体力的にはいけるはずだ。問題があるとすればメンタルのみ。どんな人達なのかわからないのでなんとも言えないが、僕が出来ることがあるとすればそこら辺の手助けだろう。あとは当日、何処かで少し時間を設けるので何か子供達に話をして欲しいと言われていたので、何か考えた方がいいかなーなんて思いつつ、どんな人達か見てからじゃないとわからないから当日考えよう。そんなこんなで当日を迎えるわけです。
・・当日は曇りだった。なんなら朝方、雨が降った。
集合してみてビックリ。中学生1年生、2年生とはこんな感じだったか!?想像していたより小さい彼らを見ると、すぐに伝えておきたいことが出て来たので少し時間を貰って伝えた。まずはサッカーをやっている人間は山を歩くのに有利だということ。サッカーをやっていた、もしくはサッカーをやっている人間にしかわからない、登ればわかるやつだ。だから君たちは体力や技術的には確実に歩けるからそこを心配する必要はないと伝えた。理由は、自分に自信を持って取り組まないと山を歩くのは厳しいからだ。
それより問題は、山というのは人が簡単に "死ぬ" 場所だということ。楽しんでもらいたいから脅すつもりはさらさらないけど、運動能力のある若い彼らではなく他者との接触等でのトラブルを避けたい。ふざけていて怪我をするなんてレベルではない、ふざけていて人を殺してしまうっていうことだけは絶対にさせたくない。僕はこれをどう伝えるか話しながら考えていたんだけど、いい方法が見当たらなかった。そもそも山では理屈的には自己責任で考える必要があって、例えばお腹すいたとか喉が乾いた、体調が悪いとか暑い寒い。そんなこと本人しかわからないから自分でちゃんと管理しないといけない。たとえそれが大人だろうが子供だろうが同じだ。だって人間は他人のことなんてわからないもの。そこは大人も子供も同じなのに、何故か大人は子供に対して知ったような行動をとることも多い。大人に相談するより子供に相談した方が真理をついていることは沢山あるし、大人が間違っている事も沢山ある。そんなことを前提に考えていたら良い方法を見つけた。
彼らの心に、自らの考えを入れることが出来るスペースは沢山残したうえで、僕はそのスペースには一切触れることなく心の片隅に "死" というワードを置くというやり方だ。話しながらなので方法までじっくり考えるゆとりはなかったが、まずは山を歩くリスクとしての "死" というワードをストレートに伝えた。そうすれば各自が自分の心で受け止めるしかないし逃げ道は一切ない。そしてもうこれだけで良い。"死" というものに対して、だからどーのとか、こういうときはこうしないといけないとか、ルールらしきものは一切伝える必要はないと思ったし、そもそもその先は僕たち大人のやるべきことだ。
"死" という言葉だけをちゃんとストレートに伝えれば彼らの中での "死" を通して自分で判断できる。
見た目は子供だけど、そんな人たちに見えます。
僕は、彼らの心を縛り付けないよう、それから固定観念を作らない発言を心がけた。喋らなくても良いぐらいだ。
そして極力自分のことは自分で考えて行動することを邪魔しないように務めた。
サッカーをやっている中学生にとって山がどんな場所なのか、みんなで行動する事にどんな意味があるのか。
それはおそらく人それぞれだし、自分で感じ取っていく年頃だしこれから何度も変わっていくことなんじゃないかと思った。
何か興味があれば自分で調べるだろうし、大人になったら自分で行くだろう。
いつの日かの、何かに対してのきっかけとなるような何かを感じてもらえればそれで良い。
自然の中で過ごす事に嘘はない。(自然の中でも、慣れてしまった環境には嘘もある。笑)
ここは、一つ目の頑張りどころ。
登ってるときに思うことは沢山あったけど、一番面白かったのはコミュニケーションの取り方。
こちらが心配するなんてとんでもない、食べ物を分け合い、水を分け合い、歌を歌い、声を掛け合いながら進む。
自然にみんなが前向きにいられれば、今回の登山で全員無事に下山する確率が格段に上がる。
余計なことは言わず、そっと見守るのが一番良さそうだ(笑)
素晴らしい。
途中で、変なおじさんに会った。年の頃は50から60歳ぐらいだろうか。
ヘルメットを被ったおじさんは、しきりに「静かになー。静かに歩けよー!」と、でっかい身体で道の真ん中に立ち止まり言っていた。
正直、なんだか恥ずかしくなってしまった。なんて言うんだろう、、そもそもこの時はそんなにうるさくなかったってのもあるんだけど、山では静かになんてルールは無いから、このおじさんがそうして欲しいという言うことだろう。たしかに山では静かに過ごしたいって人もいるからマナーとしてと言われればわかる気もするけど、ずーっと先の山のことまで考えて言うならば、これからの新しい山との関わりかたを作ってくれる人になる可能性がある若者に、「山ってのは、おじさんに静かに歩けよ!って言われる場所だった。」と思われたくないんだ。もう少し伝わる言い方するか、俺に言え。他人に意見するぐらい大きな問題ならば、もっと言えば今後の為にちゃんと解決する気があるならば、大人と話すかキチンと理由を添えて欲しい。おじさん、そんな言い方でコミュニケーションを取ろうってのならほとんど相手には伝わらないので、この子供達から学んでくれ、、、と思ってしまい、このおじさんが情けなく見えたんだ。思わず子供達に「山にも下界にもこーゆう変なおじさんいるけど、気にしなくて良いよ。」と言ってしまった。これこそ無責任な発言だった。とても反省している。
こんな状況での子供達のテンションを気にしていたが「そんでさー、」なんつって、関係ない話をしていた(笑)
そう、それで良い。
塔ノ岳山頂は、ガスの中で何も見えず。
写真は、飯食ってさあ下山というとき。
結構寒くて、確か気温は2度とかだった気がするな。
ご飯は、この極寒の山頂でカップラーメンでも食べようという話だったので、こりゃ食ったらすぐ下山だなと思っていたし、そんなこともあろうかと用意していた沢山のホッカイロを分け合って凌ぐかなって思いながら、山頂の尊仏山荘へカプラーメンを買いに行く。そしてサプライズ。
尊仏山荘の宿泊者用食堂を利用させてくれたのです。
外とここの違いは相当デカい。ストーブまでつけてくれた。
尊仏山荘の、かねやん&深松くん、ありがとうございますー!!!
子供達もこんなに嬉しそうでしたよ(笑)
・・ここでも少し、話をさせてもらった。
この立派な少年たちに、特に話せることなんてないからどうしようと思っていたけど、んじゃって話す場所に立ったら言いたいことが出てきた。
山の人の、優しさについて伝えてみよう。
山を歩いている人たちは、結構な確率ですれ違いざまに挨拶をする。そこにはいろんな意味があるけど、子供達は僕が先頭で他人と挨拶していたらどー思うんだろう?そして知らない人に挨拶されたらどーするんだろう?ってのが気になっていたので、悪趣味な僕は登山開始時には挨拶については話さず黙って歩き始めた。まあ結局、歩き始めてすぐに友達が挨拶について話したから結果はわからなかった(笑) けど、みんな挨拶をしていた。なんなら山の大先輩たちに向かって頑張ってください!なんて言い出す始末(笑)そう、それで良い。子供達にちょっと勢いがあるときには「すいません。」なんて僕が謝ってみたりしたけど、みんな「元気貰えたよー。」とか「頑張るよー。」って言っていた。
こんな感じで登ってきたから大体はわかっているはずだけど、改めて伝えたかった。山の人はいい人だよねって。
僕が山に惹かれた大部分は"山にいる人"だったから、それを伝えたいなーって思った。
みんなも知っての通り、山を登るのは大変。そんな大変なときに人に優しく出来る人ってのは強い人なんだってこと。これをわかって欲しい。本当の人の優しさってのはなんなのかってところ。あんまり深く話しても中学生には面白くないだろうから、ほどほどにしたんだけども、山に来たからには少しでも人の優しさに触れて帰って貰いたいと思った。そんなこんなで、下界に向けて小屋を出発するわけだけど、みんなのために場所を貸してくれた山小屋の小屋番さんにみんながお礼を伝えて出ていった。中には気をつけしてお辞儀までしていた人もいたなあ。後日、小屋番さんも元気で礼儀正しい姿からパワーを貰ったと言っていた。結局、人にパワーをあげて喜ばれた子供達が一番優しかったというオチ。偉そうに話してしまった俺、恥ずっ。
しかも、みんなが少しづつ出し合い丹沢まつりに寄付もした。
そして記念のバッチを受け取った。
さあ、帰りましょう。
帰りはみんなゆとりが出ていた。良い意味ではリラックス出来ていたし、悪い意味では気が抜けていた。
もちろんそれは当たり前の事で、それで正しい。標高1491mの環境に適応したという事だろう。
しかし登りと違って、どうしても人と人との間隔が狭くなる。密とか言ったらそうだけど、このリラックスした状態で下山して行くときの問題は、ほかの登山者が見えなくなってしまう事。周りが見えなくなってくると怪我に繋がる可能性もある。
どーやって歩けば良いんだろう?そんなことを考えながら途中にある、カキ氷も売っている花立山荘に到着した。
花立山荘のご主人、高橋さんにはとても良くしていただいた。
お陰様で、良い作戦を思いついた。
何人かのチームに分けて、自分たちで下山するという作戦。
僕は、本人たち任せでチームわけして貰うと、4つのチームが出来たようだったので、各チームに対してリーダーを求めた。すると、自薦、他薦、相談など様々な方法でリーダーが決まった。その間およそ10秒ちょい。各チームおよそ2、3秒で答えを出した事になる。このスピード感には本当にびっくりしたが、これはこのサッカーチームのコーチ陣がサッカーを通じて教えて来たことの可能性もあると感じたし、普段サッカー仲間として接しているところで出来上がったキャラとかもあるんだろうなーと感じた。何しろ素晴らしい。
もちろん僕も、彼らを遭難させるわけにはいかないので作戦だけは伝えた。リーダーがじゃんけんして順番を決める。そして順番通り5分置きに出発する。僕は1番目の7人編成のチームの最後尾につき、このチームのリーダーに僕が見える位置をキープしながら歩いて欲しいことと、途中でチェックポイントを作って2番目のチームと合流したいことを伝え出発。僕の友達は最後のチームの最後尾について貰った。
途中、道が分かりずらいところなどで、みんなに考えて貰う。もし後ろのグループがここで道がわからなくなるようなら、ここをチェックポイントにしたいと伝えると、「ここは大丈夫でしょ。」「この看板を見ればわかる。」いろんな考えが出て判断する。これを繰り返して進んで、途中の少し広くなっている場所をチェックポイントに選んで止まったようだ。なかなかセンスが良い。
少し経つと2番目のグループがやって来た。自分たちだけで歩くと楽しいでしょ?と聞いてみたら楽しいと答える。そりゃそうだよね。自分たちで組んだメンバーで普段と全く違う環境で過ごすのは楽しいよね。そしてこの2番目のチームリーダーに、次は少し長い距離を歩いてからチェックポイントを作って貰う(1番目のリーダーに任せる)予定だから、怪我には気をつけてと伝える。そして、その旨を3番目のチームにも伝えて欲しいとお願いして、僕たちは出発した。
次のチェックポイントは、見晴らし茶屋というところのベンチになった。結構歩いたので他のチームの動向が気になったが、彼らの手元にはスマホがあって他のチームと地図を共有していた。そしてそれを見て各チームの歩くスピードを分析していた。もちろん僕は何も言っていない。自分たちが遊んでいる一連の流れの中で確認しているといったところだろう。素晴らしすぎる。
そしてまた、2番目のチームと合流したときのリーダーの第一声。「誰も怪我はしてない。」僕は身震いした。いや、中学生を舐めていたわけではないんだけど、レベルが高すぎると思ったわけです。本当に感動しました。しかしまあ、彼らは当たり前にやっているので、僕も当たり前に受け止める。「そうか、それは良かった!」と。そしてどうやら先ほどの一個目のチェックポイントを僕たちが出発してから7分ぐらいで3番目のチームが到着したので、あまり休憩出来なかったと言っていた。どうしようかなーと思ったが、まだ彼らにゆとりはあったので、ひとまずは彼らの流れに乗ろうと思った。そしてまた僕ら1番目のチームは出発する。
このまま下まで一気に下りれるところまで来た。後ろの人たちは疲れているだろうか。そんなことを思いながら最後尾を歩いていると、驚いたことにリーダーがここで休憩すると言って止まった。今思えば絶妙のタイミングだ。一番集中力が切れそうなタイミングと場所、そして石畳の続く最も足をひねりそうな道のすぐ手前のベンチだった。素晴らしい。
そして僕たちは、全員無事に下山した。
本当に、沢山の人達に感謝することが多い1日だった。そしてたくさんのことをいろんな人から教わった。次にこんな機会があった時には、もっと注目すべきポイントが見えてくるかもしれない。そうすればより子供達が成長できるきっかけをより多く渡すことができるかもしれない。貰ってばかりの一日ではあったが、みんなが無事に下山出来て本当に良かった。
会ちゃん素晴らしい機会をありがとう!